第一級・第二級総合無線通信士は転職に有利?公的機関や無線設備の仕事での評価と、合格の難しさ

「第一級・第二級総合無線通信士を取れば、転職で有利になるのかな」 「合格する人が少ない難関と聞くけれど、そこまでして取る価値はあるのだろうか」

そう迷っていませんか?

結論を先に書くと、第一級・第二級総合無線通信士は、海上保安庁や総務省の総合通信事務所など公的機関の無線関係の採用と、無線・通信設備の保守や検査の仕事で、資格を持つ人を条件にする募集に使える資格です。海上保安庁の無線従事者の採用試験では、受験資格にそのまま書かれています。

一方で、資格名が書かれた求人は多くなく、資格だけで採用が決まるわけでもありません。船の航海士を目指すだけなら、国際航海の船でも第一級海上特殊無線技士で足ります。さらに、令和6年度の合格者は第一級が8人、第二級が3人(総務省の統計)と、合格までの道のりが長い試験です。使い道を決めてから取る資格です。

結論:総合無線通信士は転職に有利?

結論は「公的機関の無線の仕事と、無線・通信設備の保守では武器になる。船に乗るだけなら不要で、資格単体では決め手にならない」です。あなたがどこに当てはまるか、まず確認してください。

あなたの状況 転職での有利さ 次の一手
海上保安庁・総務省の総合通信事務所など、公的機関の無線・通信の仕事を目指す
+
資格あり(または取得見込み)
◎ 受験資格・応募資格に資格名が書かれている 募集の時期に合わせて、試験の申請日から逆算する
無線・通信設備の保守、基地局の検査、衛星通信の運用などを目指す
+
資格あり
○ 必須・歓迎の欄に挙がる募集がある。ただし第一級陸上無線技術士などと並べて書かれることが多い 陸上無線技術士・陸上特殊無線技士とあわせて見せる
船の甲板部職員(航海士など)を目指す △ 国際航海の船でも第一級海上特殊無線技士で足りる 乗る船の種類を確かめ、足りる資格から取る
資格なし・無線の実務は未経験 △ 取れば応募先は広がるが、合格まで長期戦になる 目指す職場を決めてから、科目を分けて取る

受験資格に年齢・学歴・経験の条件はなく、誰でも受験できます。ただし合格率はとても低いので、次の章で試験の中身と合格者の数を確認してください。

総合無線通信士とは?1分でわかる基本情報

総合無線通信士は、電波法に基づく国家資格「無線従事者」のひとつです。無線従事者の資格は全部で23種類あり、試験は総務大臣から指定を受けた公益財団法人日本無線協会が実施します。総合無線通信士は、海上・航空・陸上の無線局の設備を操作できる総合的な資格で、第一級・第二級・第三級があります。

第一級・第二級・第三級の違いは、操作できる範囲

級 操作できる主なもの(日本無線協会の案内) 試験の特徴
第一級 船舶と航空機の無線設備(モールス電信を含む)/海上・航空関係の無線局(海岸局、航空局など)/陸上の無線局(固定局、移動局、放送局など)。海上・航空関係と陸上の無線局の技術的な操作には、空中線電力の上限がある(多くは2kW、テレビジョン放送局は500W) 学科5科目+英語+電気通信術。電気通信術に直接印刷電信がある
第二級 航空関係の無線局/船舶の無線設備と海岸局などの国内通信/船舶の無線設備の国際通信(船舶の区分や海域による制限あり)/放送局を除く固定局・基地局などの技術的な操作 学科は第一級と同じ。直接印刷電信はない
第三級(違いの説明のみ) 漁船の無線設備、漁業用海岸局(国際通信は除く)、船舶の国内通信、放送局を除く固定局・基地局などの国内通信 学科は無線工学の基礎・無線工学・法規。英語は筆記のみ

第一級と第二級は、学科の問題数・試験時間・満点・合格点がすべて同じです(日本無線協会の表1・表2)。違いは、操作できる範囲と、電気通信術に直接印刷電信があるかどうか、試験手数料の額です。第三級は国内向けの資格で、国際航海の船の甲板部職員には使えません(後の章で説明します)。

出典:総合無線従事者|日本無線協会、資格別・科目別試験問題数と試験時間(表1)、国家試験の合格基準(表2) (2026年10月3日確認)

令和8年度の試験概要

項目 内容
主催 公益財団法人 日本無線協会
資格の種類 電波法に基づく国家資格。合格後に免許を申請して免許証の交付を受ける
受験資格 なし(無線従事者資格はすべて受験資格を問わない)
試験の回 年2回(9月期・3月期)
日程 9月期:9月8日〜11日(実施済み)/3月期:令和9年3月16日〜19日。科目ごとに日が分かれる
申請期間 3月期は令和9年1月1日〜20日(9月期は7月1日〜20日)。電子申請
試験地 東京・札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・熊本・那覇
試験手数料 第一級26,000円/第二級23,300円(このほか振込手数料。この金額帯は462円)
試験科目 学科5科目(無線工学の基礎・無線工学A・無線工学B・法規・地理)、英語(会話・筆記)、電気通信術
解答方式 多肢選択式のマークシート(電気通信術を除く)
結果の通知 試験終了後、およそ3週間以内に電子メールで通知
養成課程 総合無線通信士は対象外(国家試験で取る)
更新 免許に有効期限はなく、更新は不要

出典:令和8年度 総合・海上無線通信士国家試験案内、国家試験 受験案内、養成課程で取得できる資格、無線従事者Q&A 免許証の有効期限|総務省 近畿総合通信局 (2026年10月3日確認) ※受験前に必ず協会の最新の試験案内を確認してください。

学科は5科目すべてで6割が必要

科目ごとの問題数・時間・合格点は次のとおりです。

科目 問題数・時間 満点・合格点 出題の中身(令和8年9月期の問題より)
無線工学の基礎 25問・2時間30分 125点・75点 電界と磁界、電磁誘導、直流・交流回路、半導体とトランジスタ、演算増幅器、論理回路、電気計器と測定
無線工学A 25問・2時間30分 125点・75点 PLLによる周波数シンセサイザ、SSB・QPSKなどの変調、受信機、衛星通信回線、レーダー、電源、測定器
無線工学B 25問・2時間30分 125点・75点 アンテナ、給電線、導波管、電波の伝わり方(フェージング、電離層)
法規 25問・2時間30分 125点・75点 電波法とその関係規則
地理 4問(40の小問)・1時間 200点・120点 地図の●印の海岸局・港・半島・海峡・国名などを選ぶ
英語 会話7問・30分以内/筆記5問・1時間30分 105点・60点 会話35点・筆記70点の内訳。会話が15点未満だと不合格

出典:表1・表2のほか、試験問題と解答|日本無線協会(第一級の令和8年9月期の問題) (2026年10月3日確認)

学科の無線工学は、A問題20問(5択)とB問題5問(空欄に入る語の選択や正誤)で25問です。5科目それぞれに合格点があり、合計点で足し合わせる仕組みはありません。1科目でも合格点に届かなければ、その科目は不合格です。

電気通信術(モールスなど)は別に合格点がある

電気通信術は、和文・欧文の電信(モールス符号)の送信と受信、欧文の電話の送話と受話の試験です。第一級だけ、直接印刷電信(5分間で普通文250字のうち200字以上を送信)が加わります。電信の送信と受信は、それぞれ3種目(和文・欧文暗語・欧文普通語など)の合計300点のうち210点が合格点で、どの種目も30点未満であってはいけません。電話の送話と受話は、100点のうち80点が合格点です。どの種目かで合格点に届かなければ、電気通信術全体が不合格になります。電気通信術と英語は、試験が始まったあとは試験室に入れません。

第一級の申請者は年に200人ほど、合格者は1桁(令和6年度)

総合無線通信士は、受験する人も合格する人も、無線従事者の資格のなかでかなり少ない部類です。令和6年度の合格率は、統計表に載る23資格のうち、第三級・第二級・第一級の総合無線通信士が低いほうから3つを占めています。

資格 令和7年度の申請者数 令和6年度の申請者数 受験者数 合格者数 合格率
第一級総合無線通信士 207人 211人 176人 8人 4.5%
第二級総合無線通信士 72人 87人 81人 3人 3.7%
第三級総合無線通信士 144人 150人 138人 4人 2.9%
(参考)第一級陸上無線技術士 6,667人 6,948人 5,914人 1,420人 24.0%
(参考)第一級海上特殊無線技士 390人 394人 330人 196人 59.4%

出典:令和7年度の申請者数は令和7年度事業報告書|日本無線協会(資格別の表。同年度の全資格の申請者数は36,173人)。令和6年度は無線従事者試験の実施結果(令和6年度)|総務省 情報通信統計データベース。合格者数には全科目免除者を含みません。 (2026年10月3日確認)

令和7年度の第一級・第二級を合わせた申請者は279人で、全資格の申請者のおよそ0.8%です。

合格率が低い理由は、この表だけでは断定できません。学科5科目と英語、電気通信術のすべてに合格点が必要で、科目合格を使って数回に分けて合格を目指す人が多いことも、数字の見え方に関係していると考えられますが、公表資料からは確かめられません。学科だけ通った人が何人いるかも、公表されていません。

転職で総合無線通信士が評価される理由

公的機関の無線従事者の採用で、受験資格・応募資格になっている

海上保安庁は、船艇職員・航空機職員とあわせて、無線従事者の採用試験を実施しています。令和8年度(第1回)の募集案内では、無線従事者の区分が次のようになっていました。

区分 採用予定数 受験資格(高卒相当の学歴に加えて)
通信・技術 約10名 第一級または第二級総合無線通信士/第一級・第二級・第三級海上無線通信士/第一級または第二級陸上無線技術士のいずれか(取得見込みを含む)
管制 若干名 第一級総合無線通信士/第一級・第二級・第三級海上無線通信士のいずれか(取得見込みを含む)
航空通信 約5名 航空無線通信士/第一級または第二級総合無線通信士のいずれか(取得見込みを含む)

採用後は、海上保安学校門司分校で約6か月の研修を受けます。令和8年度(第1回)の受付は終了しています。

出典:海上保安庁 令和8年度(第1回)船艇職員・無線従事者・航空機職員採用試験の実施について、試験要綱|海上保安庁 (2026年10月3日確認)

総務省の沖縄総合通信事務所も、2026年度の選考採用(係長級・技術、1名)で、応募資格を、第一級総合無線通信士・第一級海上無線通信士・第一級陸上無線技術士のいずれかを持つ人としました。ほかに、高校卒業後の職務経験が通算14年(高専卒は12年、大学卒・大学院修了は10年)以上あることが条件です。採用時の俸給月額の例は、経験10年程度で287,200円、15年程度で324,800円と案内されています(受付は終了)。

出典:2026年度 総務省沖縄総合通信事務所選考採用案内(係長級(技術))|総務省 (2026年10月3日確認)

ここで見落とせないのは、どちらも総合無線通信士だけが条件ではない点です。海上保安庁の通信・技術は海上無線通信士や陸上無線技術士でも受験でき、沖縄総合通信事務所の選考採用も第一級陸上無線技術士で応募できます。総合無線通信士が特別に優遇されるとは書かれていません。それでも、資格を持っていることが応募の入り口になる職場があることは、はっきりしています。

無線・通信設備の保守や検査の求人で、必須・歓迎に並んでいる

民間の求人では、資格名が募集の条件に書かれた例が見つかりました。

求人 仕事 総合無線通信士の位置づけ 給与の記載
セノン千葉支社(アルバイト) 千葉県庁で、県の災害情報を消防施設や気象庁などへ配信する防災無線の業務。夜間のシフト制 必須。第一級・第二級総合無線通信士、第一級・第二級陸上無線技術士、第一級陸上特殊無線技士のいずれか。未経験OK 時給1,200円〜1,500円
エム・シー・シー(正社員) 防衛省・自衛隊の衛星通信を支える会社で、通信衛星の電磁波監視と管制。千葉県旭市、3交替 歓迎。第一級・第二級陸上無線技術士、第一級陸上特殊無線技士、第一級総合無線通信士などの無線関連資格の保有者(取得に関心のある人を含む) 月給32万円〜61万円
スタッフサービス(派遣) 携帯電話の基地局の竣工後検査、定期検査、見通し調査。東京都世田谷区 「第一級総合無線通信士などの資格をお持ちの方」と記載 時給2,500円(月収例46万2,500円・残業代含む)
エフォートアドバンス(正社員) 通信ネットワーク管制センター設備の保守・運用。山口県山口市 「あれば尚可」。第一級総合無線通信士、第一級陸上無線技術士、電気通信主任技術者(伝送交換)。未経験OK 月給18万円〜36万円
西沢学園 関西テレビ電気専門学校(正社員) 電気・電子系の専任教員 特に歓迎・優遇。第一級総合無線通信士、第一種電気工事士、第一級陸上無線技術士など 月給19万円〜30万円

出典:求人ボックスの各募集ページ(セノン千葉支社、エム・シー・シー、スタッフサービス、エフォートアドバンス、西沢学園) (2026年10月3日確認。給与は経験・勤務条件で変わります)

求人ボックスで「総合無線通信士」「第一級総合無線通信士」「海上無線通信士」などの言葉で探し、上位の募集を1件ずつ開いて確かめたところ、資格名が書かれていた募集は10件ほどでした。更新が直近2か月ほどのものは、そのうち7件ほどです。

この結果から、「資格が意味をなさない」とは言えません。見えてくるのは、総合無線通信士だけを条件にした募集は少なく、第一級陸上無線技術士や第一級陸上特殊無線技士と並べて「どれか」「あれば」と書かれる形が多いことです。資格名で検索するよりも、「防災無線」「基地局」「衛星通信」「通信設備 保守」「電波」といった仕事の言葉で探したほうが、資格を活かせる募集に出会えます。

船の仕事では、総合無線通信士まで求められる場面は限られる

国土交通省の中国運輸局の案内によると、無線設備を持つ総トン数20トン以上の船の甲板部職員(船長・航海士・運航士)には、無線従事者資格が必要です。

  • 国際航海に従事する船:第一級海上特殊無線技士以上(総合無線通信士は第一級・第二級)
  • 国際航海に従事しない船:第二級海上特殊無線技士以上(総合無線通信士は第一級〜第三級)

つまり、航海士になるためだけなら、国際航海の船でも第一級海上特殊無線技士で足ります。第三級総合無線通信士は国際航海の船では認められません。船の仕事を目指す人が総合無線通信士まで取るのは、無線設備の保守や通信の仕事にも広げたいときです。

船との関係では、ほかに次の使い道があります。

  • 海技士(通信)の海技試験を受けるには、所定の無線従事者資格が必要です。北海道運輸局の確認表では、一級海技士(通信)は第一級総合無線通信士、二級は第一級・第二級、三級は第一級〜第三級のいずれかとされています。
  • 義務船舶局の無線設備を操作するには、無線従事者資格のほかに船舶局無線従事者証明が必要です。総合無線通信士の免許を持つ人も例外ではなく、義務船舶局の操作に5年間一度も従事しないと証明は失効します(再訓練で継続できます)。

自衛隊の通信員の案内には、教育課程のなかで無線従事者の国家資格を取るコースがあると書かれています。資格の級までは書かれておらず、入隊前に総合無線通信士が必要という意味ではありません。

出典:甲板部職員に必要な無線資格|中国運輸局、海技試験(通信・電子通信)申請時提出書類確認表|北海道運輸局、無線従事者Q&A 船舶無線従事者証明|総務省 近畿総合通信局、通信員|防衛省・自衛隊 (2026年10月3日確認。中国運輸局・北海道運輸局のページに更新日の表示はありません)

資格手当の額は、確認できた求人には書かれていなかった

上の求人のなかに、総合無線通信士を対象にした資格手当の額を書いたものは見つかりませんでした。資格手当の有無と額は、応募先ごとに確かめる必要があります。

総合無線通信士が転職で有利にならないケース

(1)航海士など、船に乗る仕事だけが目的の場合

国際航海の船でも、甲板部職員に必要なのは第一級海上特殊無線技士以上です。第一級海上特殊無線技士の試験手数料は9,200円で、第一級総合無線通信士の26,000円より安く、試験の科目も無線工学・法規・英語・電気通信術に絞られています(令和8年度 特殊無線技士国家試験案内)。船に乗るのが目的なら、先に第一級海上特殊無線技士を取り、海技士(航海)の免許と乗船経験に力を入れるほうが近道です。

(2)合格したあと、免許を申請していない場合

試験に合格しても、それだけでは無線設備を操作できません。合格後に、総合通信局へ無線従事者免許の申請をして、免許証の交付を受ける必要があります。履歴書に書く前に、免許証を受け取っているか確認しましょう。

(3)数年がかりになる前提がないまま、転職の時期を決める場合

学科5科目、英語、電気通信術のすべてに合格点が必要で、合格率は低い試験です。1回の受験ですべて取ろうとせず、科目合格の制度を使って数回に分ける前提で、転職の時期を考えましょう。

とはいえ、これは「取っても意味がない」という話ではありません。使い道がはっきりしている人にとっては、持っている人が少ない分、応募の入り口になる資格です。次の章で、状況別の活かし方を見ていきます。

【経験別】あなたの場合、総合無線通信士は武器になる?

通信・無線設備の現場経験がある人は、陸上無線技術士とあわせて見せる

基地局、衛星通信、防災無線、放送設備などの保守や運用の経験がある人は、資格が経験の裏づけになります。求人では、総合無線通信士が第一級陸上無線技術士や第一級陸上特殊無線技士と並んで書かれるため、自分が持つ資格のうち、どれが募集の条件に当たるかを見て応募先を選びます。

すでに第一級陸上無線技術士を持っている人は、総合無線通信士の受験で有利です。協会の表7では、第一級陸上無線技術士の免許を持つ人は、第一級総合無線通信士の受験で無線工学の基礎・無線工学A・無線工学Bが免除されます(申請が必要)。残るのは、法規、英語、地理、電気通信術です。

メーカーで通信機器や無線機器の開発・評価・サービスを担当する道もあります。設備の保守会社と機器メーカーのどちらが自分に合うか、資格を職務経歴書にどう書けば評価されるかは、エンジニア向けの転職エージェントに相談できます。

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公的機関の無線の仕事を目指す人は、募集の時期から逆算して受験する

海上保安庁の無線従事者の採用試験は、受験資格が「取得見込みを含む」と書かれていました。資格の取得前でも、見込みがあれば申し込める区分があります。令和8年度(第1回)の受付は6月でしたが、次の募集の時期は、海上保安庁の採用ページで確認するしかありません。

沖縄総合通信事務所の選考採用のように、資格に加えて、高校卒業後の職務経験が通算10年以上(大学卒の場合)必要な募集もあります。この場合、資格だけでは足りず、民間などでの実務の経験が応募の前提です。

公的機関の採用は、転職エージェントを通さず、各機関のページから直接応募する形が基本です。募集の案内が出てから慌てないよう、試験の申請(受付月の1日から20日)と受験の時期を逆算して、科目合格を積み上げておくのが現実的です。

船員(海技士)の経験者は、陸上の通信職へ広げたいときに取る

内航の航海士が国際航海の船へ移りたいだけなら、必要なのは第一級海上特殊無線技士です。総合無線通信士を取る意味が出るのは、海技士(通信)を目指す人や、船の通信設備の保守、海岸局など陸上の無線の仕事へ広げたい人です。

第二級総合無線通信士を持ち、海岸局や船舶局の無線設備の国際通信の操作に7年以上従事した経歴があれば、認定講習を修了して第一級総合無線通信士の資格を得る道もあります(日本無線協会の案内)。国家試験とは別の取り方です。

学生・未経験の人は、使い道を決めてから取る

無線の実務経験がない人が、総合無線通信士だけで採用の決め手を作るのは難しいでしょう。ただし、セノン千葉支社の防災無線の募集のように、資格を持っていれば未経験でも応募できる仕事はあります。

第二級で応募できる職場(海上保安庁の通信・技術や航空通信、セノン千葉支社など)と、第一級が必要な募集(海上保安庁の管制、沖縄総合通信事務所の選考採用)のどちらが自分の目標に近いかを確かめてから、級を選びましょう。

総合無線通信士を活かせる仕事と給与の目安

仕事 主な内容 資格の効き方 給与の記載(募集案内・求人)
海上保安庁の無線従事者(通信・技術/管制/航空通信) 無線通信などの有資格者を対象に採用。採用後は海上保安官として勤務 ◎ 受験資格に資格名が書かれている 募集案内で確認(採用後に研修約6か月)
総務省の総合通信事務所の技術職(沖縄の選考採用の例) 事務所の所掌事務のうち、技術的な知識を活かす係長級の業務 ◎ 応募資格に資格名。ほかに通算10年以上の職務経験が必要 採用時の俸給月額の例:経験10年程度で287,200円、15年程度で324,800円
衛星通信の監視・管制 通信衛星の電磁波監視、管制、無線設備の維持管理 ○ 歓迎資格に挙がる 月給32万〜61万円(3交替)
基地局の検査 竣工後検査、定期検査、見通し調査 ○ 資格をお持ちの方と記載 時給2,500円(派遣)
防災無線の運用 県の災害情報の配信。夜間のシフト ◎ 必須の資格のひとつ 時給1,200円〜1,500円(アルバイト)
通信設備の保守 通信ネットワーク設備の保守・運用 △ あれば尚可 月給18万〜36万円
専門学校の教員 電気・電子系の科目の授業 ○ 歓迎・優遇 月給19万〜30万円

出典:上記の海上保安庁、総務省、求人ボックスの各募集(2026年10月3日確認)。給与は職務・勤務地・経験・残業代の扱いで変わり、資格保有者の平均ではありません。

あわせて取得すると強い資格

第一級陸上無線技術士

陸上の無線局の無線設備の技術操作ができる国家資格です。求人では、総合無線通信士と並んで書かれる資格の筆頭でした(セノン千葉支社、エム・シー・シー、エフォートアドバンスなど)。総合無線通信士の学科とも重なり、陸上無線技術士の免許があれば第一級総合無線通信士の無線工学3科目が免除されます。逆に第一級総合無線通信士の免許があれば、第一級陸上無線技術士の受験で法規が免除されます(表7)。

ただし、令和6年度の第一級陸上無線技術士の合格率は24.0%(受験者5,914人・合格者1,420人)で、こちらも難関です。順番は、自分の仕事が設備の技術側か、通信の運用側かで決めましょう。

第一級陸上特殊無線技士

陸上の無線局の多重無線設備などの技術操作ができる資格です(無線従事者制度|総務省 東北総合通信局)。防災無線や衛星通信の求人で、総合無線通信士・陸上無線技術士と並べて書かれていました。令和6年度の合格率は36.3%(受験者4,957人・合格者1,801人)で、総合無線通信士よりずっと取りやすく、通信設備の仕事へ入る最初の資格として向いています。

第一級海上特殊無線技士

船に乗る仕事なら、総合無線通信士より先に必要な資格です。国際航海の船の甲板部職員は、この資格以上が必要とされています。

総合無線通信士に合格するには

科目合格を3年間持ち越して、数回に分けて取る

総合無線通信士の試験には、科目合格の制度があります。日本無線協会の「国家試験についてのFAQ」によると、第一級・第二級総合無線通信士の試験で合格点を得た科目(電気通信術を除く)は、その科目の試験が行われた月の翌月初めから起算して3年以内に実施される、同じ資格の試験で免除されます。申請が必要で、申請書に書かないと免除になりません。

使うときの注意点が2つあります。

  • 免除されるのは、同じ資格の試験だけ。 第二級で通した科目は、第一級の試験では免除されません。学科の内容は同じでも、第一級と第二級のどちらで受けるかを決めてから申請します。
  • 電気通信術は別の仕組み。 電気通信術の合格は、協会の表5により、3年以内に受ける別の資格の試験でも免除されることがあります。第一級で合格した電気通信術は第二級・第三級・海上無線通信士・航空無線通信士の受験にも使えますが、第二級で合格した電気通信術は第一級の受験には使えません。

このほか、無線従事者の資格や業務経歴、認定学校の卒業による科目免除の制度もあります。自分が当てはまるかは、協会の表6〜表8で確認してください。

出典:国家試験についてのFAQ|日本無線協会、電気通信術の科目合格者に対する免除(表5)、一定の無線従事者の資格を有する者に対する試験の一部免除(表7)、資格と業務経歴を有する者に対する試験の一部免除(表8) (2026年10月3日確認)

独学でつまずきやすいのは、計算・地理・電気通信術

公式の問題と解答は、協会のページで直近の試験分が公開されています。独学でつまずきやすいのは次の3点です。

  • 無線工学の計算
    電界、回路、アンテナの利得、給電線の反射など、式を使う問題が基礎と工学Bに多く出ます。式の意味と、数字を入れる順番を覚えます。
  • 地理は暗記量が多い
    日本の海岸局の名前から、世界の港、半島、海峡、国名まで、地図を見て5択から選びます。40問で200点満点、120点が合格点です。試験でやるのは名前の暗記と地図の対応づけなので、直前期に回数をこなす科目です。
  • 電気通信術は学科とは別の練習が必要
    モールス符号の送受信は、試験が始まってから入室できません。協会が公開している受信用紙の書き方も確認しておきます。

直前期は、出る論点を○×で1周して、迷う所だけ深掘りする

noteのページ「【第一級・第二級総合無線通信士】学科5科目の出るとこだけ○×100問」は、無線工学の基礎・無線工学A・無線工学B・法規・地理の5科目に20問ずつ、全100問を収録したPDF教材です。○×のすべての問題に解答とポイントが付き、無料サンプル問題が2問見られます。直前期に5科目を1周して、「分かる」と「迷う」を分ける用途に向いています。

英語(会話・筆記)と電気通信術は収録されていません。 この2つは、協会の公開問題などで別に練習してください。実際の試験は多肢選択式で、地理は地図を見て選ぶ形です。○×で論点を確かめたあとは、公式の過去問で本番の形に慣れておきましょう。

総合無線通信士を活かして転職を成功させる進め方

資格が条件に書かれた求人を探す

求人検索では、「総合無線通信士」だけでなく、「防災無線」「基地局」「衛星通信」「通信設備 保守」「無線 検査」といった仕事の言葉でも探しましょう。資格名が「必須」「歓迎」の欄の奥に書かれた募集や、「無線従事者」とだけ書かれた募集を見逃しにくくなります。

公的機関を考えている人は、海上保安庁や総務省の総合通信事務所など、各機関の採用ページを直接確認します。募集の時期や区分は年度ごとに変わります。

職務経歴書で、資格と経験をつなげる

「第一級総合無線通信士 取得」と書くだけでは伝わりません。無線設備を実際に扱った経験と、あわせて書きましょう。

  • 扱った無線設備の種類(基地局、衛星通信、防災無線、放送設備など)
  • 担当した業務(保守、定期検査、障害対応、運用、工事の立会いなど)
  • 免許の取得年と、取得を目指している資格(陸上無線技術士など)

転職エージェントを味方につける

民間の求人は、無線の資格を「必須」にするものと「あれば尚可」にするものが混ざっています。応募前に、自分の資格と経験が、募集の本当の条件に合っているかを確かめられると、時間の無駄が減ります。

転職エージェントを使うメリットは?

求人探しから内定後の手続きまで、相談できることは主に5つあります。対応範囲はサービスによって異なります。

条件を相談し、内定後に年収を交渉してもらえる

「夜勤のない職場がいい」「保守の仕事から運用の仕事へ移りたい」「年収は今より上げたい」といった希望を、担当者に伝えられます。リクルートエージェントは、内定後の年収交渉・会社選定のアドバイス・入社日の調整などもサポートすると案内しています。

希望に合う求人を紹介してもらえる

希望を伝えると、条件に合う求人を紹介してもらえます。リクルートエージェントは、公開求人のほかに一般には見られない非公開求人も扱うと案内しています。メイテックネクストは、エンジニアに特化し、電気・電子・半導体や組み込みソフト・ITの専門コンサルタントがいると案内しています。

入社前に職場の実情を知れる

資格手当の有無、夜勤や待機の頻度、保守と運用の仕事の割合、未経験者への研修など、求人票では分かりにくい情報を応募前に確認できます。リクルートエージェントは、独自に分析した業界・企業情報の提供を案内しています。

書類や面接の対策をしてもらえる

無線設備の経験を職務経歴書にどう書くか、面接で資格をどう説明するかを、担当者に相談できます。リクルートエージェントは、提出書類の添削と面接対策を案内しています。

面接の日程調整を任せられる

今の仕事を続けながらでも、企業との日程調整を担当者に任せられるので、転職活動を進めやすくなります。

さらに、これらは求職者に費用がかからないサービスです。エージェントは採用が決まったときに企業から報酬を受け取る仕組みなので、求職者がお金を払うことはありません。

こんな人は、まず相談だけでもしてみてください

  • 無線の資格を持っているが、今の仕事では活かせていない
  • 保守の仕事から、検査や運用など別の仕事へ移れるか知りたい
  • 資格名が書かれていない求人のなかから、資格を活かせる仕事を見つけたい
  • 転職するかはまだ決めていないが、自分の市場価値を知りたい

1つでも当てはまるなら、エージェントに相談してみましょう。あなたの経験と資格で、どんな募集があるのかを質問し、答えてもらうだけでも価値があります。

どの転職エージェントが自分に合う?

転職エージェント タイプ 特徴 向いている人
メイテックネクスト(公式サイト・新しいタブで開きます) 特化型(エンジニア) エンジニアに特化した無料の転職支援サービス。電気・電子・半導体、組み込みソフト・ITなどの分野に専門のコンサルタントがいる メーカーで通信機器・無線機器の開発、評価、サービスエンジニアなどを目指す人
リクルートエージェント(公式サイト・新しいタブで開きます) 総合型 公開求人・非公開求人の数が多く、提出書類の添削や面接対策、内定後の年収交渉も案内している 設備の保守・運用・検査など、幅広い職種と業界を比べたい人

通信設備の保守や防災無線のような現場の求人に絞って紹介する転職エージェントは、公式サイトで確認できたものがなく、この表には入れていません。エンジニア特化型と総合型を1社ずつ、2社に登録して紹介される求人を比べながら、気になる会社の採用ページや求人サイトの個別の募集もあわせて見てください。

よくある質問

総合無線通信士は意味ない資格ですか?

資格名が書かれた求人は多くありませんが、意味がないとは言えません。海上保安庁の無線従事者の採用試験や沖縄総合通信事務所の選考採用では受験資格・応募資格に挙げられ、防災無線や基地局検査の募集では必須や歓迎の条件になっています。一方で、船の航海士になるだけなら第一級海上特殊無線技士で足ります。使い道を決めてから取る資格です。

第一級と第二級は、どちらを取ればいいですか?

学科は同じで、違いは操作できる範囲、電気通信術の直接印刷電信、試験手数料(第一級26,000円・第二級23,300円)です。確認できた募集では、海上保安庁の通信・技術や航空通信、セノン千葉支社は第二級でも条件を満たせ、第一級が条件なのは海上保安庁の管制と沖縄総合通信事務所の選考採用でした。狙う募集の条件で決めましょう。

科目合格の制度はありますか?

あります。合格点を得た科目(電気通信術を除く)は、その試験が行われた月の翌月初めから起算して3年以内の、同じ資格の試験で免除されます。免除は申請が必要です。電気通信術は別の仕組みで、協会の表5に免除の組み合わせが載っています。

第三級総合無線通信士との違いは何ですか?

第三級は国内向けの資格で、漁船や船舶の国内通信などが中心です。学科は無線工学の基礎・無線工学・法規で、英語は筆記のみ、地理はありません。試験手数料は15,000円です。国際航海の船の甲板部職員には使えず、海上保安庁の通信・技術の受験資格にも挙がっていませんでした。なお、第三級総合無線通信士の免許を持ち、船舶局の無線設備の国際通信の操作に7年以上従事した経歴がある人は、認定講習で第二級総合無線通信士の資格を得る道もあります。

受験資格や、免許の更新はありますか?

受験資格はなく、誰でも受験できます。免許に有効期限はなく、更新も不要です。ただし、合格したあとに免許を申請しないと、無線設備を操作できません。

独学で合格できますか?

協会が直近の試験の問題と解答を公開しているので、独学で挑む人もいます。山場は、無線工学の計算、地理の暗記、電気通信術のモールスです。科目合格を使って数回に分けるのが現実的です。直前ノートもご活用ください。

まとめ:あなたの次の一手

総合無線通信士は、公的機関の無線の仕事や、無線・通信設備の保守・検査を目指す人にとって、応募の入り口になる資格です。一方で、資格名が書かれた求人は多くなく、船に乗るだけなら第一級海上特殊無線技士で足ります。合格までは数年がかりになる前提で、狙う職場の条件から第一級か第二級かを選んでください。

あなたの状況に合わせて、次の一手を選んでください。

参考

執筆・編集

資格転職ノート編集部企画・執筆・更新

企画から執筆・更新まで一人で行っています。